北海道・洞爺湖サミット 国際メディアセンター(IMC)環境ショーケース(2008.07.05〜10)にて、5台の「触れる地球」による展示スペース「地球茶室」が展開されます。
人類は地球という巨象の背中に乗るノミのような小さな存在ですが、その認識の断片をジグソーパズル のように集めて、巨象の体調や体温の微妙な変化をモニターしつつあります。ここに置かれた5つの地 球儀は、その意味でこの星の自画像であるとともに、この惑星環境のかけがえのなさに気づき始めた地 球時代の人類の精神を表現したものでもあります。
また「茶室」は、もともと四季の移ろいなどの環境情報を(茶器や掛軸などのしつらいとして)編集するメ ディアであり、それを通じて宇宙の真理を体感する知的装置でした。その本来のコンセプトからすれば、 現代の先端技術でリアルタイムの地球の自画像を描きだすこの空間は、まさに“地球茶室"と呼ぶにふさ わしいものでしょう。
この「地球茶室」が、地球環境と人類の危機だけでなく、そうした自己認識を共有する人類社会の新たな 未来を映しだす鏡となることを願っています。
この「地球茶室」では、毎時00分と30分に5台の 地球儀を使った「地球時報」という特別なショーを 用意しています。月から眺めた美しい"地球の出/ 地球の入り"のハイビジョン映像が終わると、その 地球の姿をあたかもspirit(魂)として受胎したか のように、5台の地球儀に一つ一つ光が灯り、やが て一斉に回転しはじめます。
これは5台の地球が協調するシンクロナイズド・ スピニング“Synchronized-spinning”ですが、実は それぞれ固有のダンスを踊ってもいます。北極や 南極を中心に回転する地球もあれば、海流や地震 活動で躍動する地球もあります。宇宙からみれば、 北極が上にあるわけでは必ずしもありません。その 意味で、これらはメルカトル図法の死んだ世界像 を脱して、ダイナミックに呼吸する生きた一つの 球体(Globe)として世界を捉えなおす、私たちの世 代の新たな地球観の表現といえます。
そして“Synchronized-spinning"が終わると、いよ いよ「時報」――世界各地の現在の時刻と気象情報 が、経度に応じた配置でグラフィカルに表示され たあと、謎めいた数字がゆらぎながら変化してい きます。これは今この瞬間(この時報の0秒からの 約1分間に)、この惑星上にどれだけの数の人のいのちが誕生し、どれだけの生命が星屑のように消 えて行っているのか?をリアルタイムに表示したカウンターであり、人口爆発のさなかにあるこの 惑星のセルフ・モニターでもあります。
刻々とうつろい、変化してゆく地球の「今」を体感 いただければ幸いです。
![]() デザイン:内田繁(株式会社内田デザイン研究所) |
茶の湯の思想「わび」とは、「質素の美」をいいあわ らしています。人と人との心の交流は、けして華美な装飾や余分な贅は必要としません。自然に耳を 傾け、人と自然とが融合した質朴な姿に深い美を見つけたものです。たとえ粗末なものでも仮設の場でも、人は豊かな時を共生することができます。そこには日本文化のひとつの方法が潜んでいます。ある意味で、物質文明を省みさせてくれるものであり、現在わたしたちが直面している世界の状況や未来への生き方の示唆を含んでいるようにもおもいます。そんな茶の湯のおもいを体現し、この場だけのしつらえを用意しました。一度きりかもしれないその出会いを豊かにするために。
茶の湯は、日本文化におけるもてなしの心とかたちを伝える芸術です。その美学を「わび」といい、たとえ粗末なものしかなくても、茶を飲むという単純な行為のなかに、十分に人と人の交流を図る時間と空間をつくるができるという哲学が生きています。 それは、今日のような地球環境の変動やコミュニケーションの崩壊が危惧される現代社会のなかでも、 本来、人が生き、心を通わすということはどういうことかということを教えてくれています。いまの時代だからこそ、あらゆる表面性を排除し、 質素であることを美に転換する茶の湯の文化の独自性は、人間が感じる喜びや共感の本質を問う日本文化に潜む重要な方法だとおもいます。この機 会に、世界の方々が、その一端に触れていただけたら幸いです。
この地球儀は、世界初のインタラクティブなデジタル地球儀で、自分の手で 自由に回すことも、虫眼鏡ポインターを使って世界各所のローカル情報を検 索することもできます。(今回の展示では虫眼鏡ポインターは使用せず) この直径1.28mの地球=実際の地球の1000万分の1のサイズで見ると、たと えば空気の層(対流圏:厚さ約1万m)もわずか1mmの厚さ。また、地球から 38万kmの距離にある月はここから38m離れた場所に浮かぶバスケット ボールと、地球や宇宙のスケールを"体感"することが出来る――その意味で もtangibleなメディアといえます。
内部に魚眼レンズつきのプロジェクターが内蔵され、地球をまわす手の動き (球体に加えられた圧力)をセンサーが検知して、それに応じた地球像をた えずコンピュータがレンダリングして映し出しています。このように「触れ る地球」は、最先端のデジタル技術とアナログなデザインの融合といえます。 インターネット経由で1時間ごとに最新の気象データを取得・更新して現在 の雲の様子を表示するなど、そのリアルタイム性も特徴です。 「触れる地球」は2002年にプロトタイプを発表、2005年の愛・地球博でも展示 され好評を博しました。バックミンスター・フラーは半世紀前に、リアルタイ ムで地球の状況をモニターしうる球体コンピューター・システムの必要性と、 それが国家や国連の政治プロセスを変える可能性について予言しましたが、 そうした情報政治学的なビジョンはすでに現実的なものになりつつあると 私たちは感じています。
「触れる地球」は、単体(スタンドアローン)の展示システムとしての面白さは もちろん、複数の地球儀をネット経由で連動させたり、サーバー経由でデー タを共有することも可能になりつつあります。ですから、たとえば「触れる地 球」を設置した地球上の複数の地点を結んで同時に地球の授業をしたり、今 回の「地球時報」での“Synchronized-spinning"で踊らせたりということも可 能になります。
「地球を結んで、みんなで回しあう、そしてみんなで育てあう生きた地球儀」 というのが、いま私たちが目指しているビジョンです。単にリアルタイムで インタラクティブに地球環境について学べるツールという段階を超えて、地 球的な感性を育む公共プラットフォームとして、このクリティカルな時代に お役に立てることを願っています。
「地球茶室」ディレクター:竹村真一[地球茶室]
総合企画・プロデュース
竹村 真一(Earth Literacy Program)
空間ディレクション
内田 繁(株式会社内田デザイン研究所)
照明ディレクション
藤本 晴美
サウンドディレクション
川崎 義博
協力:特定非営利活動法人ガイア・イニシアティブ/Earth Literacy Program/株式会社GKテック/株式会社内田デザイン研究所
[触れる地球]
プロデュース: 竹村 真一 (Earth Literacy Program)
制作: 株式会社GKテック
「触れる地球」WEBサイト http://www.tangible-earth.com
「地球茶室」に関するお問い合わせ
E-mail: info[at]gaiainitiative.org
「触れる地球」に関するお問い合わせ
E-mail: te-info[at]elp.or.jp